第8回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2004年2月号の転載です。
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「カンボジア通信 February 8, 2004」

1. 日常生活 - モノは大切に
   
日本はまだ寒い日が続いているようですが、こちらは1日の最高気温は30度を超えているにも拘わらず、そう暑さを感じることもなく比較的過しやすい季節です。

最近、毎週日曜日の午前中に住んでいるバサックのテニスコートで生徒たちとテニスを興じるようになりました。こちらでは空き地や野原で簡単に出来るサッカーやバレーボールは盛んですが,テニスはコートも少なく、コート使用料を払ってまでプレーするクメール人は少ないようです。ここでは、コート、ラケット、ボールも無料で貸してくれる為に生徒たちにとっては魅力的なのでしょう。初めてプレーする者が殆どでしたが、続ける内に自己流ですが上達してきました。

私も皆とプレーしている内、履いているカジュアルシューズの片方の底がパックリ剥がれてしまいました。古くもあり捨てて新しいのを買おうと思いましたが、生徒の一人が「先生、直します。」と言ってくれました。こちらでは、靴は何度でも修理して完全に履きつぶすまで使うようです。
直してくれたシューズをみると、接着剤でつけただけでなく、底と剥がれた上部の部分のまわりすべてを新しい糸で縫い付けてあり、驚いたことにもう一方の靴も同じように縫ってくれていました。買った時より丈夫になり、その手仕事の完璧さに感心しました。お金を払おうとしたら、2,000リアル(55円位)しかかからなかったので要りませんと結局、お金を受け取ってもらえませんでした。

こちらで市内観光をされた方は気付かれたと思いますが、道端やマーケットの至る所に車、バイクやあらゆる機械、器具の中古屋があります。私と同じ世代の方なら記憶にあるでしょうが、我々の子供の頃は鍋釜、こうもり傘から家庭内にある多くの器具類は度々修理して長い間大事に使用していたものです。
大量消費に伴う大量のゴミ廃棄物の発生と先進国が抱える問題を考えると、モノを大切にするという習慣はこれからの若い世代にも是非伝えていくべきことだと生徒から教えられました。使い捨てに慣れ親しんでしまった私も大いに反省させられた一件となりました。 

    
2. 合気道 - アーク・プレック・アンチャン道場一周年&本部道場東南アジア巡回指導

昨年11月の演武大会効果によるクメール人の生徒増加は一段落しましたが、最近、日本人を含む外国人の参加希望者が増えています。日本人はJICA専門家の親子をはじめ年金生活をプノムペンで過しているという65歳の男性も来られました。その他、スロバキア人の夫婦に黒帯のカナダ人も再開したいと訪ねてきました。最初からのフランス人、トルコ人のメンバーも含め少しずつですが国際化も進みつつあります。

さて、昨年1月18日にオープニングセレモニーを行いましたアーク・プレック・アンチャン道場の一周年を記念して1月17日にパーテイを開催しました。
カンボジア合気道クラブの主要メンバーと道場の関係者、生徒たちを中心に40名でささやかなパーテイとしました。当日は,2時30分よりの稽古時間をパーテイに充てました。バクセイ・チャムクロング・クラブからビデオ機器やスピーカー及び食材を持参し、生徒たちが思い思いに料理作りを行いました。
全員参加による手作りのパーテイで、オープニングセレモニーのビデオを見たり、クメールダンスを教わったりと一周年記念を楽しみました。三周年、五周年と彼らが中心となって歴史を繋いでいけたらと願っております。

また、年初のビッグイベントとして、2月5日、6日の二日間、本部道場主催による巡回指導がおこなわれました。関師範、佐々木指導員によるカンボジアでは初めての巡回指導です。三道場すべてで指導をお願いしましたが、両先生から取りだけでなく、受けの方の構え、打ちこみ方など普段目の行き届きにくいところも丁寧に指導いただき、生徒たちも新鮮な刺激を受けたようです。

先生たちがお帰りになった後の稽古で生徒に感想を聞いてみました。先生が技をかける時は力強く早いのに、最後に投げ押える時はゆっくりやさしく捌いてくれたと、まだ稽古を始めて一年の自分らへの指導であることを良く理解してくれたようで、安心しました。来年の巡回指導に期待を抱かせる良い経験をさせていただき、関師範、佐々木指導員に心より感謝申し上げます。

      
3.その他 - 子供の不発弾による爆発事故

1月29日にパンテイアイ・ミンチェリィ州で13歳の少年が自宅近くの藪で見つけた不発弾を弟に見せようと家に持ち帰り、遊んでいる内に爆発するという事故がありました。13歳の長男を筆頭に10歳、4歳と8ヶ月の兄弟全員が死んでしまいました。両親が畑仕事から戻ると子供全員が亡くなっただけでなく、自宅も全焼です。
不発弾や地雷による死傷者の数は年々減少しつつありますが、カンボジアの地方に行くとまだこのような悲しい事故が発生しています。日本を含む各国のNGOが不発弾、地雷撤去に取り組んでいますが、米軍の空爆による不発弾やソ連製、中国製などの地雷が今もかなり残されたままです。まだまだ撤去作業は続く状況で、このような悲しい事故が無くなるのは何時のことなのでしょうか。 

カンボジア合気道クラブ 工藤  剛