第9回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2004年3月号の転載です。
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「カンボジア通信 March 8, 2004」

1. 日常生活 - 暑い季節も目の前に
   
日本は啓蟄も過ぎたというのに各地での大雪で、まだ気候も安定してないようです。でも、今年は桜の開花予想も早いようで春遠からじでしょう。
こちらは3月入りした途端に室温が30度を超え始め、いよいよ1年で1番暑くなる4~5月へ向けた日々が始まりました。2月末までは夜寝ていても汗をかくこともなく過しやすい毎日でしたが、これからは暑さとの共存となります。稽古で良く汗を流すことが、この国での体調管理には1番のようで、日々の稽古を大事にしていこうとあらためて気持ちを引き締めております。

関西地方を中心に鳥インフルエンザの感染拡大が続き、カラスまで感染していることが判明したりで、皆様の関心も高まっていることと思います。
そこで、こちらの現状もお伝えしておきましょう。アジア地域では10ヶ国で鳥インフルエンザが発生していますが、このうち、2月中旬までに報告されている死者の数はベトナムで15名、タイ7名の計22名です。この2ヶ国以外では死者は報告されていません。
その後は、ベトナム、タイでも新たな死者は出ていないようで、封じ込めに成功しつつある地域が増えつつあるとのことです。ベトナム,タイではこれまでにそれぞれ4,000万匹、3,800万匹の鶏が処分されました。昨年のSARSの際と同様、WHOの各国事務所も監視体制を強め、なお事態を見守り続けているところです。

カンボジアもベトナムとタイに挟まれている国だけに影響は免れず、地方での発生が報告されました。しかし、ベトナムから運び込まれようとした鶏卵を没収し、処分するなど、それなりに対応はしているようです。
プノムペンは都会ですし、我々が直接生きた鳥に触れることはまずありません。卵、鶏肉も加熱した料理しか口にしませんので、普段の生活で特に気になることはありません。JICA事務所の健康相談員も手洗いとうがいを励行し、生きた鳥に接触しないよう指導している程度です。

こちらへ来られる方は、韓国の男性を魅了した「喜び組」の女性がいる北朝鮮レストランの焼肉やクメール料理を安心してお楽しみいただけると思います。

   
2. 合気道-「合気道・東南アジア地域演武会&セミナー イン ハノイ」準備たけなわ

1月にご案内しましたベトナム日本センター(VJCC)主催によるハノイでの合気道演武大会&セミナーの開催準備が佳境に入ってまいりました。日本からは東京の堀添師範(VJCC初代所長)、奈良の窪田師範をはじめ大宮道場の市塚先生も参加されるそうで、VJCC合気道クラブのメンバーも案内状の作成、発送や先生方の受け入れ準備などに忙殺されております。

今回のハノイでのイベントは、ハノイの要田さんを始めとしてラオスの青木さん、カンボジアの私を含むJICAの関係者が中心となって、東南アジア地域内での合気道を通した文化交流をこれまで以上に発展させようと企画したものです。
JICA東京本部でもシニアボランティア、青年海外協力隊員などの活動をより効果的なものにするという目的から、この企画を積極的に支援してくれることになりました。これにより、私と青木さんはJICAの「広域研修制度」による業務出張が認められました。それぞれ、カンボジアから生徒2名、ラオスから生徒5名を連れてハノイへ行けることになり、皆張りきっているところです。

昨年11月1日のプノムペンでの第一回日本武道演武大会、11月22日のビエンチャンでの第二回日本武道演武大会に続く今回のイベントを通して、東南アジア地域における合気道の和、輪が更に広がることを期待しております。日本では毎年恒例の仙台合宿が4月17日~18日に実施されるとのことで、海外遠征は無理な方が多いと思いますが、この記念すべきイベントへの参加、ご支援も是非ご検討下さい。

3.国家予算 - あってないようなもの

この国でも各省庁の予算は予算法により国会で毎年決められていますが、実際の支出をみるとバラバラのようです。一般の国民に直接関係の深い省は社会省、教育省、保健省、地域開発省の4つです。

ところが、この4つの省が2003年度に実際支出した金額はいずれも当初決められた予算を下回っております。
主な省庁の予算支出は新聞報道によれば、以下の通りです。

省庁名      当初予算(百万ドル)   支出率(%)
教 育 省      80.7         79
保 健 省      50.5         59
地域開発省      5.25         54
金 融 省      12.6        199
内 務 省       4.1        167

昨年度はSARSによる観光収入の減少、ビザ、通関収入の減少に見舞われ、歳入が不足するなかで、国防支出や内務省の支出の突出が目立ちました。
一方、教育省による予算の支出が問題のようで、学校の先生の賃金体系は極端に悪く、月給25ドルの金額ですら1月分がまだ支給されていないと報じられていました。この為に、私塾を開いて稼いだり、なかには、モトドップドライバーのアルバイトに精を出したりで、本来の教師としての職務を果たすことが出来ない先生も多いようです。

日本を始め各国のNGOやボランティヤ団体が学校を建て、寄贈していますが、子供たちへの教育をより効率的に運営していく為には、国による教育システム改善への前向きな取り組みが更に求められねばなりません。
   
カンボジア合気道クラブ 工藤  剛