第19回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、 月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。 今回は2005年3月号の転載です。
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「カンボジア通信 March 1, 2005」

1. 合気道活動報告

セミナー & 新道場オープニングセレモニー

東芝合気道部の金子さん(当部OB)が2月10日~18日の間、カンボジア合気道クラブ稽古指導を目的にプノンペンを訪問されました。2月21日にオープンした「アーク トゥール クラサング合気道道場」に掲げる開祖、2代目道主、現道主の写真を携えての2度目の訪問でした。11日からレス ジャルデンス ドゥバサック道場での指導をお願いしましたが、2度目ということで生徒たちのなかに顔見知りも多く、スムーズに指導されておりました。

アーク トゥール クラサング道場では、ラブート氏ら多くの生徒がオープニングセレモニーに向けた準備に忙しく稽古は出来ませんでしたが、道場正面に掲げた開祖、2代目道主、現道主のお写真をお見せすることが出来ました。週末の休みもあり計5回の稽古でしたが、生徒たちもいつもと違う先生の指導を受けることでこれまでとは異なる新鮮さを感じてくれたようです。

また、今回は稽古のない週末を利用して一泊二日でシアヌークビルを案内しました。プノンペンからバスで片道4時間の旅ですが、バス代往復7ドル、ホテル1泊18ドルと信じられない位の安さです。ここのリアム国立公園で、JICAシニアボランティア前川宏氏(環境教育、神奈川県出身)がレンジャーとして自然環境保護の仕事をされていて、ボートで案内してもらいながら彼の仕事ぶりを見せてもらいました。
21,000 ヘクタールの広い公園を30名ほどのレンジャーで管理しているそうですが、手が回らないためにマングローブの木が不法に伐採されている所があちこちに見られます。ちなみに、マングローブの木はプノンペンでもよく使われている炭の原料で、需要が多いために伐採をすべて止めることはとても難しいようです。

ボートから陸地に上陸して、案内してくれたレンジャーたちに誘われ,村人の家で昼食をご馳走になりました。ジャックフルーツが家の周りに鈴なりに生っていて、金子さんには珍しかったようで一杯食べてました。果物を切る際に使用した包丁や葉っぱが食べた後で気になったようですが、お腹もこわさず幸いでした。前回の初訪問とはまた一味異なるお土産話しを持って帰国できた事と思います。生徒たちへのご指導有難うございました。

2月20日には、東南アジア巡回指導B班の皮切りとして金澤師範、小谷指導員がプノンペン入りされました。翌日21日午前中(9時~10時半)のセミナーは、学校、勤めの関係で生徒が参加できるかどうか心配でしたが、30名来てくれ両先生の指導を熱心に受けることが出来ました。特に、受けの構え、打ち込み方と受身を正確に行うことで、取り受け双方の練磨がより高められることを身体で示されました。生徒たちの受けの姿勢が良くなるよう今後更に注意しながら稽古していきたいと思います。

同日午後からは「アーク トゥール クラサング合気道道場」のオープニングセレモニーが、教育青年スポーツ省、カンダール州、ユニセフ及び日本大使館、J I C Aカンボジア事務所各代表の臨席を得て、開催されました。

カンボジア側からは、道場建設に対する感謝の言葉と今後への期待を込めた挨拶がありました。日本側の代表からは、この新しい合気道道場がカンボジアひいては世界の平和へ貢献できるような活動の場になるようにとの期待感が表明されました。この思いは、道場のドーネターであるアークの皆様の強い願いでもあり、道場を預かる者の一人として身が引き締まりました。

各代表によるテープカットの後、新道場での初めての合気道の演武を行いました。小谷指導員の座り技、投げ技の基本技から始まり、「カンボジア合気道クラブ」の各道場メンバーによる固め技、投げ技の演武が披露されました。プレックアンチャン道場の高校生たちは当初、選抜メンバーで演武する予定でしたが、午前中の金澤師範によるセミナーに参加した20名全員がやる気充分で道衣に着替えていましたので、急遽、普段の稽古のままをお見せすることにして、全員参加による演武となりました。この為、初心者の生徒は戸惑った動きをしていたようですが、今後も稽古を続けていく上で、良い経験になったことと思います。

最後の締めの演武を金澤師範にお願いしましたが、本部道場からお出でいただいたプロによる合気道の技を出席された皆様も充分に堪能されたようでした。オープニング セレモニーを盛り上げていただいた金澤、小谷両先生に改めて感謝申し上げます。メディアについてはテレビ局3社にだけ案内しておいたのですが、結局、5社が取材に見えた他、新聞社からの電話インタビューを受けました。

この式典の模様は同日夕方から翌日にかけてのスポーツニュースで、テレビ各局により一斉に全国放映されたことをご報告申し上げます。なお、新道場での稽古スケジュールを火曜日、水曜日、木曜日、金曜日の週4回に決め、3月1日より本格的に生徒募集を開始します。内、水曜日、金曜日の週2回を私が担当し、あとの2回は1級を持つアシスタント コーチ4名に指導を任せることにしました。10~16歳位の子供が中心となるようですので、こちらのメンバーと力を合せてあせらず、ゆっくりと育てていきたいと思います。

・アーク プレック アンチャン道場—不都合発生

突然、生徒数が増え、うれしい悲鳴をあげていたプレック アンチャン道場の床があちこち抜けてしまいました。一番上のカバーとその下のマットを剥がして床と床下の状況を確認したところ、床材はすべてどこからか持ってきた廃材を使用しており、ボロボロでした。コンクリートも通常の半分の薄さで砂が表面に浮き出ている箇所もありました。セメントでも大分、材料費を浮かしたものと思われます。アークからは充分すぎるほどの建設資金が仲介者の日本人の方に渡されており、かなり立派な道場ができて当然のはずでした。

しかし、建設工事中に工事内容を誰もチェックしなかった為に、建設業者は好きなように手抜き工事を行えたようです。生徒数も増え、そのままにも出来ないのでなんとか修理して再開できるよう準備に入りました。幸い、昨年私が一時帰国した際に合気道仲間の皆様からアークへ寄付いただいた分を、カンボジア合気道クラブの活動資金として使ってよいとの申し出がアークより寄せられ、有難くお受けしました。

この貴重な資金とJICAより提供されるシニアボランティアへの活動資金と合せて、なんとか修理できそうです。早く、修理工事を進め生徒たちが又、元気に稽古にはげめるように致します。皆様から寄せられたご支援に、改めて感謝申し上げます。
  

2.カンボジア・トピックス

・停電多発
東芝合気道部の金子さんが滞在中にも市内のレストランや私の自宅で停電が起こりました。恐らく、今の日本ではめったに経験出来ないと思いますが、こちらで生活していると良くあります。昭和20年代の日本と同じで、子供の頃にタイム スリップしたように感じます。私が住むレス ジャルデンス ドゥ バサックでは停電すると直ぐに自家発電へ切り替えますので、冷蔵庫の中のミルクや生ものが腐ることはありません。

一般の家庭では電気冷蔵庫はあまり普及しておらず、氷を入れたアイスボックスでミネラルウォターやジュースなどを冷やしています。クメールの方は停電に慣れているようで、稽古中でも慌てず静かに回復をまちます。但し、一度停電すると直ぐに回復することはありませんが。

増え続ける電力需要に供給が追いつかないことが最大の理由ですが、水力発電への依存度が高く、乾季で殆ど雨が降らないことも停電に拍車をかけているのでしょう。プノンペンでは、15万世帯が電力供給契約を電力会社と結んでいて、120メガワットの需要があります。この内、昨年だけで2万2千世帯が新規に契約していて、電力会社には110メガワットの供給能力しかありません。

従って、ある地域で2時間送電すると、他の地域で送電をストップすることでやりくりしているようです。民間の電力会社がディ-ゼル燃料を使った発電事業を3月15日から始める予定で、1日32メガワットの電力が供給されます。更に、雨季に入れば供給も改善され停電も少なくなることでしょう。

・メコン流域共通観光ビザの発行

観光省は、カンボジアと中国、ラオス、タイ、ベトナム、ビルマの6ヶ国が共通の観光ビザ発行を検討することに同意したと発表しました。これが実現すれば、EU圏における共通ビザと同じように「大メコン半地域」ビザをそれぞれの国で取得すれば、6ヶ国内を自由に旅行できるようになります。

2004年にカンボジアを訪れた旅行者の数は、100万人の大台に乗りました。タイの1,200万人に比べればわずかですが、このシングルビザが使えるようになり、更に、航空便の本数が増えれば、2010年までには600万人へ増えると期待しています。

2005年末までには、6ヶ国すべてがこのシングルビザ計画を承認する見通しで、より多くの観光客の訪問が、この国の経済発展と国民の生活向上につながるようであれば、何もいうことはありません。 
    
カンボジア合気道クラブ
工 藤  剛