第3回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2003年8月号の転載です。
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「カンボジア通信 August 2, 2003」

1. 日常生活?市内での銃撃戦と総選挙結果速報
こちらは日本とは逆に暑さも峠を越したようで、寝苦しいこともなく、クーラーを使うことも4~5月に比べてめっきりすくなくなりました。
7月には、市内の平成レストラン近くの路上で強盗と日本大使館書記官護衛警官と   の間で銃撃戦が発生しました。更に、自宅より車で7~8分位の所にあるモニボン橋のたもとでも銃撃戦があり、武器検問を突破した犯人2名と巻き添えで通行人2名が死亡、3名の警官を含む6名が重軽傷を負いました。
また、総選挙に絡んだ手榴弾の投げ込みや暴力事件が地方でも発生しましたが、全体的には静かで安定した状況が続いています。
7月27日に行われた総選挙の結果速報が翌日の新聞に掲載され、速報とはいえこんなに早く大勢が判明することに驚きました。日本、欧米のドナ-国が選挙用の各種機器などを提供しており、それなりにシステムが充実してきていることを示しているのでしょう。
日本はじめ各国の選挙監視団による評価も、投票や開票作業をやり直さねばならないような違法行為は特になかったと概ね良好でした。
速報による結果では、与党のCPPが前回より9議席増の73議席と123議席のうち59.3%を確保しました。但し、単独政権を組める3分の2には届かず、野党のフンセンペックかサム・レインジー・パーテイとの連立政権となります。
ちなみに、ラナリッド王子が総裁を務めるフンセンペックは26議席(-17)、サム・
レインジー・パーテイは24議席(+9)でした。残りの20政党の議席はゼロで、CPPの全体に占める獲得投票率が47.4%であることからすると、各選挙区毎の比例代表制がこれらの結果に影響しているのでしょうか。
8月8日以降に正式発表があり9月に新政権が発足する予定ですが、野党2党はCPPによる買収、脅し及び投票日までの不正行為を理由にプノムペンや一部選挙区での投票や開票のやり直しを要求しています。
また、フンセン氏が首相から退かない限り連立政権には協力しないと主張しており、新政権発足がどのようになるのか、我々には皆目見当がつきません。選挙結果の正式
発表以降の動きから目を離せない状況が続きそうです。

2. 合気道?「カンボジア合気道クラブ」のお披露目式開催
皆元気に稽古に励んでおりますが、稽古の大敵は突然くる激しいスコールです。はじめての雨季(5月~10月)を迎えてから気がついたのですが、スコールは稽古が始まる夕方や夜の時間帯に降ることが多いようです。
親の車で来る子が2名いますが、あとは全員バイクか自転車が交通手段のすべてです。
従って、稽古が始まる直前に激しいスコールが来ると、途端に参加者の人数が減ってしまいます。稽古前30分くらいの間の空模様が気になるこの頃です。
関東甲信地方の梅雨が明けた8月2日(土)午前中に「カンボジア合気道クラブ」のお披露目式がバクセイ・チャムクロング・クラブで開催されました。
教育・青年・スポーツ省の高官Mr.Lak Sam At、JICAの力石所長及び「カンボジア格闘技委員会」のお歴々をお迎えして、式典が挙行され、これで「カンボジア合気道クラブ」がこの国において正式に認められたことになります。
JICAからの資金提供でマット200枚、道着100着がカンボジア合気道クラブへ贈られたことも披露され、会場から大きな拍手で迎えられました。

これまでの成果をお見せするために、3道場による演武も行いました。
アーク・プレック・アンチャン道場からバスで参加した高校生22名も緊張しながらも、四方投げ、入身投げなどの基本技をこなし、暖かい拍手を受けていました。
高校生による演武の指導は、週7回の稽古にほぼ毎回参加しているクンテーン氏(4級)とテイープ氏(4級)に任せました。
あとの2道場もそれぞれ女性・子供による呼吸法の演武、短刀取り、自由技などの演武を披露し、稽古開始以来約10ヶ月の間稽古してきた成果を充分に発揮してくれました。演武の受けを取れる若手も育ってきましたので、私の自由技演武でデモンストレーションを締めました。
大勢の前で演武をするという始めての体験をしたことで、生徒たちも稽古を続けていく上で大きな励みになったことと思います。
これを契機に更なる飛躍を目指していけると確信できたお披露目式となりました。
なお、この模様はTV局4局により明日全国放映され、皆様にも参加いただいた1月のアーク・プレック・アンチャン道場オ-プニング・セレモニーなども含めて、既に、6回ほど合気道の紹介がTVで放映されることになります。

3. 治安情報?「みちのくに一人旅」にご用心
現在、タイ・カンボジア国際国境としてオスマイ(オッド・ミアンチエイ州)、チャム・イエイ(コッ・コン州)とポイぺト(バンテイアリー・ミアンチェイ州)の3ヶ所があります。この中で、ポイぺトはカジノのある街として有名で、タイからのギャンブラーとカンボジア人の日雇い労働者、建設作業員、モーターサイクルドライバーなどが集まる歓楽街です。この為に風俗店も多く、ドラッグ、人身売買、密輸やHIV/AIDSがはこびり、カンボジアの社会が抱える病巣がすべて存在する街と言われています。
我々JICA関係者も単独行動は避けること、移動は陸路を避け空路にすることを指示されており、外務省の海外安全情報でも「渡航の是非を検討」地域に指定されております。取り締まるべき役人の給料が安い為(25~40ドル/月 !!)、麻薬のデイラーから金の提供を受けているケースも多く、警察力も不充分で治安の悪い地域です。
ところが、6月末に勇敢というよりは無謀にも一人でタイからこのポイぺト経由で陸路入国した邦人女性がいました。更に悪いことに、ポイぺトで相乗りタクシーを利用し、プノムペンへ向けて移動しました。
同じタクシーに乗り合わせたカンボジア人男性3名に、車中でパスポート、カメラを奪われたうえ、首を絞められるなどの暴行を受けたことから生命の危険を感じて、この女性はタクシーが少しスピードを落とした時にドアを開けて飛び降りたそうです。
結局、全身打撲、左眼窩骨折、頚椎脱臼などの重傷を負ってしまいました。
事件が発生した場所は通信関係のインフラも未整備な為に、日本大使館の警備班でも事件や被害者に関する情報収集に困難を極め、対応に苦労されたようです。
「みちのくに一人旅」は犯罪の標的として狙われやすく危険ですので、腕に覚えのある皆様も危険を事前に察知し、避けることも武道の極意と心得て、くれぐれもご用心ください。