第6回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2003年12月号の転載です。
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「カンボジア通信 December 3, 2003」

1. 日常生活—-日照りにもかかわらず、今年の米供給は安泰
12月に入って気温も28度を下回るようになり、朝晩はかなり涼しく感じられるようになりました。乾期に入って、2月くらいまでは更に過ごし易くなります。今年の雨期の間の雨不足による日照りの影響で、コムポムトム州、コムポムチャム州では米の生産量が落ち込みますが、カンボジア全体では50万トンの余剰となるようです。昨年も20万トンの余剰で、この国の自然の恵みの素晴らしさを再認識させられます。米不足の州には支援組織、政府、赤十字やフリーマーケットを通して、融通されることになります。

ちなみに、カンボジア米はプノムペン市内のマーケットでは、1,250リアル(35円)/1kg で売られており、地方ではその半分以下で手に入るようです。勿論、全体の所得水準、物価水準が桁違いですが、日本における価格と比較すると、農業政策の是非を考えざるを得ません。
卵は1パック(10個)で、1,900リアル(53円)ですが、卵は日本でも物価の優等生だけに米に比べれば、あまり割安感はないかと思います。

2. 合気道—-第二回日本武道演武大会報告(ラオス)
11月21日、23日と22日にラオス、ビエンチャンにて、それぞれ「合気道セミナー」と「第ニ回日本武道演武大会」が開催されました。今回も昨年11月同様、タイ合気会の深草先生が11名の生徒を同行され、合気道セミナーの指導、演武大会の大トリの演武と活躍されていました。
モンゴルの前川海外青年協力隊員と私はそれぞれ現地より会員1名を同行し、参加しました。私の受けを取ったクンテ-ン氏(3級)は、大きな演武大会での初めての受けで、リラックスするよう言っておいたのですが、ガチガチで、捌くのに少々苦労しました。まだまだ自分の修行の足りなさを感じた演武となってしまいました。

東京からは金子、坂田先輩、西グループ、後藤グループ、南グループに第一製薬の館野さんが加わり、総勢10名による賛助演武で大会に花を添えてくれました。昨年を上回る1,600~1,800名位の来場者があり、青木さんの2年間の成果が結実した良い大会となりました。橋本大使、西脇JICA所長(和同流4段)も大いに満足されておられました。

演武会終了後にアリランレストランにて、合気道関係者交流懇親会をラオス合気道クラブが開いてくれ、ラオスメンバーを始めとして世界各国から来ている合気道メンバーが集う賑やかなパーテイとなりました。東京からお出でいただいた皆様も国際交流を大いに楽しみ、おいしいラオ・ビア-やモンゴル焼酎を沢山味わえたことと思います。

皆様からのご寄付を始めとして、多くの暖かいご支援を賜り、青木さんはじめラオス合気道クラブのメンバーも大満足のうちに大きなイベントを終えることができました。この場を借りて、あらためて皆様に御礼申し上げます。

    
3.不名誉な話題—-日本人の逮捕事件
演武大会の報告の後に以下の話題を書くのを躊躇したのですが、ベトナムやカンボジアの少女たちの過酷な環境にふれざるを得ませんでした。11月28日のThe Cambodian Daily(英語版)の一面に、ついに日本人とドイツ人が実名と写真付きで大きく報道されました。2人とも、プノムペン郊外のSvay Pak Village にある「売春宿5」で、16歳以下の少女を相手にしたことで現行犯逮捕されたものです。

日本人(K.M 兵庫県出身、54歳)は、少女6人を相手に自ら撮影したビデオテープも押収され、ドイツ人(E.V 61歳)は、12歳と14歳の少女を相手にしたとの罪によるものです。8名はいずれも仕事があるとベトナムから連れて来られた少女たちで、現在、人権擁護団体が保護しており、帰国させる方向で事情聴取を進めています。

この件とは別に、73歳のオーストリー人がカンボジアの14歳の少女とホテルに居たところを逮捕されたことも話題となっています。この男性は、少女が9歳の頃から家族付き合いを続けており、この間、少女の両親に家を買い与えた他、お金の面倒もみてきたようです。この為に、少女の両親は裁判所にオーストリー人の釈放と娘を家へ早く戻すよう申し入れるという、我々には理解しがたい展開となっております。

いずれのケースも、大使館に介入の余地は無く、弁護人をつけ、カンボジアの法律に則って公正に手続きが行われることを見守るだけでしょう。裁判で有罪となれば、10年から20年は収監されるとのことで、犯した罪に対する見返りは、当然のことながら厳しいものとなるかもしれません。この「売春宿5」の経営者三名も逮捕され、営業停止となりました。

女性問題省のMs.Mu Sochua大臣は、国家警察に対して更に厳しく取り締まるよう申し入れましたが、他の売春宿の経営者たちは警官にお金を渡せば客は守れると、従来通りの商売を続けています。結局、観光客が訪れる限り、商売は続けられるという構図は簡単には変わりそうもありません。私としては、日本人らによる悪しき行状をお伝えするのみにて、どんな感想を記せば良いのか迷えるおのこの一人として、ただ困惑するばかりです。

カンボジア合気道クラブ  工 藤  剛

第5回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2003年11月号の転載です。
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「カンボジア通信 November 9,2003」

1. 日常生活?雨季も終りに

11月に入ってプノムペンではめっきり雨の日が少なくなり、雨季も終りに近づいたようです。これからは、気温もいくらか低くなり、こちらの人には比較的過ごし易い季節となります。

逆に、日本では、寒さも少しずつ厳しさを増していくことでしょう。皆様、体調を崩されませんようお気をつけ下さい。
今月、プノムペンでは7日~9日の水祭りに9日のフランスからの独立50周年記念式典が重なり、市内は各州からの見学者で溢れています。4月の正月の時は逆に、プノムペンから各州に出て行く人が多い為、この時期が一番の賑わいとなります。

さて、10月20日にこちらに戻りましたが、7月27日選挙後の連立政権はまだ組閣されず、シアヌーク国王の仲介による与野党3党の話し合いが11月5日に行われました。この会議でなんとか3党間の基本的合意が出来たようで、フン・セン氏を首相とする新政権の発足へむけた準備がやっとスタートするようです。

この間の政治的混乱の影響かどうか例によってはっきりしませんが、10月17日カンポットでフンセンペック党の支持者が殺害された他、同18日にフンセンペック系ラジオ局員が殺害され、同21日にもフンセンペック党の歌手が銃で撃たれ重傷、娘をかばおうとした母親が射殺されるといった事件が相次ぎました。

普段生活していて、治安が特に悪化したと感じることはありませんが、今度こちらにこられる方は、昼間の観光と稽古に専念されて、夜遊びは控えるようになると思います(自宅前のホテルのカラオケバー位は、ご案内できるかな? 館野さん!)。

2. 第一回日本武道演武大会報告
11月1日午後2時30分から5時まで国立文化センターにおいて、合気道・柔道・空手道による「第一回日本武道演武大会」が開催されました。ラオスの青木さんもラオス合気道クラブのメンバー5名を同行され、合気道セミナーの指導と演武大会に参加してくれました。

来賓として、小川大使、力石JICAカンボジア所長、カンボジア側から教育・青年・スポーツ省のH.E. Bun Sok次官、カンボジア柔道連盟のMr.Monh Kamsan代表、カンボジア格闘技委員会のMaj.Gen.Nem Sowath代表や各国大使が臨席され、約500名の来場者となりました。

小川大使、H.E. Bun Sok 次官の来賓挨拶の後、柔道、空手道、合気道の順に、それぞれの演武を行いました。柔道の演武では、小川大使(講道館3段)が海外青年協力隊員の江藤昌史3段を相手に、礼と相手を敬う武道精神を強調されつつ説明演武を披露され、来場の皆様から大きな拍手を受けておられました。

小川大使は11月末にはデンマーク大使へ栄転されることになり、日本・カンボジア外交関係樹立50周年のイベントが我々との最後の大きな仕事となります。このような記念すべきイベントで大使と共に第一回の日本武道演武大会を開催することが出来、カンボジア武道界の歴史に残る良い思い出になると思います。

空手道の演武は松涛館、和同流、新極真会の3流派による競演となりました。新極真会岐阜支部から派遣されている杉原健一2段による氷の試割りとMr.V. Chamreun(松涛館4段)との試合形式の組手演武も珍しかったのか、かなり観客の興味を引いたようです。その他では、日本人の子供空手教室の子供たちによるかわいらしい演武も大いに受けていたようです。JICA事務所所員の増田さんの奥様は合気道の初心者演武に出場され、親子による異種武道競演となり、良い記念となったことでしょう。

合気道が最後に登場し、アーク・プレック・アンチャン道場の高校生20名が固め技、投げ技の基本技を中心に、若者らしい躍動感に溢れた演武を披露してくれました。演武大会に参加された小川大使、力石JICA所長をはじめ、教育・青年・スポーツ省のH.E.Bun Sok 次官らカンボジア側の来賓の方々も、その成長ぶりを見て、心より喜んでいただいたようです。女性、初心者による呼吸法の稽古に続いて、レス・ジャルデンス・ドウ・バサック道場メンバーには武器技(短刀取り)に挑戦してもらいましたが、なんとかこなしてくれ安心しました。

バクセイ・チャムクロング・クラブ道場の若手による演武は、私の指導による片手取り三教、横面打ち四方投げ、横面打ち小手返し、片手取り回転投げを行ないました。締めは、日本人コーチによる演武で、住友商事の大塚雅康3段(大阪大学合気道部OB)が若手2名を相手に自由技と二人掛けを披露しました。
次いで、ラオス合気道クラブ初段5名が剣・杖の形と自由技の演武を行ない、青木5段は武器技中心の演武で合気道の多様性、変幻自在ぶりを紹介してくれました。

最後に、この演武大会の大トリを役不足とは思いましたが、カンボジア合気道クラブを代表して私が勤めさせてもらいました。大塚3段は私よりかなり大柄で、学生のような派手な受けを取られたこともあり、カンボジアにおける「第一回日本武道演武大会」の締めの演武をなんとか恙無く終えることが出来ました。これもひとえに、私の一時帰国時に札幌、仙台、東京、福井と全国各地の合気道仲間の皆様が浄財をお寄せいただき、大きな支援をいただいた賜物です。お蔭様で、記念となる大きな大会を無事やり遂げることが出来、こちらの皆様とも心から喜んでいるところです。

なお、ラオスでは引き続き第二回日本武道演武大会を11月22日に控えており、青木さんも皆様からの大きな支援を受けて、大いに意を強くしているところです。ビエンチャンでの演舞大会に参加される館野さん、坂田さん、金子さん、西さんと後藤グループの皆様と力を合わせて、青木さんを大いに盛り上げていきたいと思います。

皆様からの暖かいご支援に対しまして、最後に重ねて心より御礼申し上げますと共に、皆様の益々のご健勝をお祈りしております。 合 掌

第4回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2003年9月号の転載です。
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「カンボジア通信 September 1, 2003」

1. 日常生活?雨不足の影響大

日本は冷夏で寝苦しい夜に悩まされることも少なかったようですが、カンボジアでは雨季にも拘わらず雨量が例年に比べてかなり少なめで生活面への影響が心配されております。

漁業はGNP構成比12%を占め、縫製品、木材、ゴム、農作物と共にこの国の主要産業の一つです。淡水魚の漁獲量は世界第4位だそうで、この内半分は税金逃れの為に不法輸出されています。タイへはトン当り367ドルと砂利並みの値段で輸出される一方、加工された魚はトン当り9,472ドルで香港へ輸出できます。しかし、加工産業が未成熟な為にその量はわずかに留まっているのが残念ながら現状です。
今年は雨量が少ない為に、メコン河やトンレサップ河共に昨年に比べて水面が1mも低く、魚の産卵への影響で、来年の漁獲量の落ち込みが懸念されています。
政府も網目の細かい魚網の禁止や電気使用の漁の取り締まり、更に、商業用漁獲を7月から9月まで禁止するなどの対策を取っていますが、9月以降の雨量回復が一番の改善策となるようです。

また、米の主要生産地であるバッタンバン州とシエムリアップ州でも、水不足に見舞われており、今後半月以内に十分な雨量が確保出来ないと水田が干上がってしまうと悲鳴をあげています。
やはり、日本同様、その季節にあった天候となることが一番なんだなと感じさせられます。
  

2. 合気道?11月以降のイベント目白押し

2001年11月からラオスで合気道の指導に情熱を傾けてきた青木さんの2年の任期が終りに近づき、その前のクライマックスを迎えようとしております。
彼の2年間の活躍と実績は「合気道探求」第26号で既にご覧いただいたと思いますが、11月21日、22日にビッグイベントを行います。
タイ合気道協会の深草先生による合気道セミナー(21日)と第2回日本武道演武大会(22日)をビエンチャンで開催します。
私も、カンボジア合気道クラブのメンバーと共に参加し、イベント盛り上げに少しでも協力出来ればと考えております。
日本からも4名の方がビエンチャン、プノムペンに応援に来てくれるそうで大いに楽しみにしています。

また、カンボジア合気道クラブとしても、日本、カンボジア外交関係樹立50周年、カンボジア独立50周年記念行事に参加して、プノムペンで演武大会をやることに決めました。11月10日前後を予定していますが、柔道マンの小川大使のスケジュールを押えるべく、現在、Sumitomo Corp.カンボジア事務所の大塚さんと調整中です。

合気道の演武大会がカンボジアで一般公開されるのは初めてですので、場所の決定、柔道、空手道も含めたメンバーの確保から資金繰りなどいろいろ忙しくなりそうです。
  
3. 閑話

?村の火消しも金次第
8月9日にプノムペン郊外のある村で火事があり、男の子2名が死亡、51軒を焼失し、96家族がホームレスとなりました。
その後すぐに、司法当局は2名の消防士を職務停止させ、調べに入りました。消防士の月給もご多分にもれず20ドル程度と安い為、消火の際に20~28ドルを村人に要求することが日常茶飯事のようです。しかし、この2人は400ドルを要求、村人がお金を払えないことから消火作業をストップしたとの疑いで調べを受けているようです。

死亡した子供の家族は国と町から112万リエル(280ドル)、残りの95家族は
12万リエル(30ドル)に20kgの米、衣料品、その他生活必需品の提供を受けましたが、この国では、まさに命や財産も金次第で大きく左右されるようで、この現実に何とも言えぬ気持ちを抱かざるを得ません。

シアヌークビル探訪
稽古のない時間を利用してプノムペンからバスで片道4時間のシアヌークビルへ行ってきました。ここは、タイ湾に面した素晴らしい海岸リゾート地で有名で、同じボランテイア仲間(栗林女史)がレンジャーとして、リアム国立公園でマングローブ林の管理をはじめ自然環境保護の仕事に携わっている所です。
バスも車内で蚊2匹を捕まえたことを除けば、エアコンもついていて、国道4号線の道路も良く快適でした。
ビーチは雨季のシーズンオフで観光客も少なく、さわやかな海風を身体一杯に浴びながら、シャコ、エビ、カニずくしのランチを満喫しました。ホテルの目の前のビーチサイドレストランで、日がタイ湾にゆったりと沈むのを眺めながらのデイナ-ものんびりと英気を取り戻すのに絶好でした。
翌日、レインジャー女史にリアム国立公園をボートで2時間のコースで案内してもらいました。河の両岸に群生するマングローブの林と時々ペリカン、イーグルなども姿を現し、日本ではお目にかかれない風景を堪能することが出来ました。

マングローブは炭の材料として使われるために乱伐の跡があちこちにみられますが、レインジャーの数も少ない為に広大な公園をきちんと管理するのは至難の業と彼女が嘆いていたのが心に残りました。
夜はホテルでカジノが楽しめ、朝食付きで1泊20ドルと格安料金で、家族が来た時にまた来てみたいと思います。

第3回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2003年8月号の転載です。
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「カンボジア通信 August 2, 2003」

1. 日常生活?市内での銃撃戦と総選挙結果速報
こちらは日本とは逆に暑さも峠を越したようで、寝苦しいこともなく、クーラーを使うことも4~5月に比べてめっきりすくなくなりました。
7月には、市内の平成レストラン近くの路上で強盗と日本大使館書記官護衛警官と   の間で銃撃戦が発生しました。更に、自宅より車で7~8分位の所にあるモニボン橋のたもとでも銃撃戦があり、武器検問を突破した犯人2名と巻き添えで通行人2名が死亡、3名の警官を含む6名が重軽傷を負いました。
また、総選挙に絡んだ手榴弾の投げ込みや暴力事件が地方でも発生しましたが、全体的には静かで安定した状況が続いています。
7月27日に行われた総選挙の結果速報が翌日の新聞に掲載され、速報とはいえこんなに早く大勢が判明することに驚きました。日本、欧米のドナ-国が選挙用の各種機器などを提供しており、それなりにシステムが充実してきていることを示しているのでしょう。
日本はじめ各国の選挙監視団による評価も、投票や開票作業をやり直さねばならないような違法行為は特になかったと概ね良好でした。
速報による結果では、与党のCPPが前回より9議席増の73議席と123議席のうち59.3%を確保しました。但し、単独政権を組める3分の2には届かず、野党のフンセンペックかサム・レインジー・パーテイとの連立政権となります。
ちなみに、ラナリッド王子が総裁を務めるフンセンペックは26議席(-17)、サム・
レインジー・パーテイは24議席(+9)でした。残りの20政党の議席はゼロで、CPPの全体に占める獲得投票率が47.4%であることからすると、各選挙区毎の比例代表制がこれらの結果に影響しているのでしょうか。
8月8日以降に正式発表があり9月に新政権が発足する予定ですが、野党2党はCPPによる買収、脅し及び投票日までの不正行為を理由にプノムペンや一部選挙区での投票や開票のやり直しを要求しています。
また、フンセン氏が首相から退かない限り連立政権には協力しないと主張しており、新政権発足がどのようになるのか、我々には皆目見当がつきません。選挙結果の正式
発表以降の動きから目を離せない状況が続きそうです。

2. 合気道?「カンボジア合気道クラブ」のお披露目式開催
皆元気に稽古に励んでおりますが、稽古の大敵は突然くる激しいスコールです。はじめての雨季(5月~10月)を迎えてから気がついたのですが、スコールは稽古が始まる夕方や夜の時間帯に降ることが多いようです。
親の車で来る子が2名いますが、あとは全員バイクか自転車が交通手段のすべてです。
従って、稽古が始まる直前に激しいスコールが来ると、途端に参加者の人数が減ってしまいます。稽古前30分くらいの間の空模様が気になるこの頃です。
関東甲信地方の梅雨が明けた8月2日(土)午前中に「カンボジア合気道クラブ」のお披露目式がバクセイ・チャムクロング・クラブで開催されました。
教育・青年・スポーツ省の高官Mr.Lak Sam At、JICAの力石所長及び「カンボジア格闘技委員会」のお歴々をお迎えして、式典が挙行され、これで「カンボジア合気道クラブ」がこの国において正式に認められたことになります。
JICAからの資金提供でマット200枚、道着100着がカンボジア合気道クラブへ贈られたことも披露され、会場から大きな拍手で迎えられました。

これまでの成果をお見せするために、3道場による演武も行いました。
アーク・プレック・アンチャン道場からバスで参加した高校生22名も緊張しながらも、四方投げ、入身投げなどの基本技をこなし、暖かい拍手を受けていました。
高校生による演武の指導は、週7回の稽古にほぼ毎回参加しているクンテーン氏(4級)とテイープ氏(4級)に任せました。
あとの2道場もそれぞれ女性・子供による呼吸法の演武、短刀取り、自由技などの演武を披露し、稽古開始以来約10ヶ月の間稽古してきた成果を充分に発揮してくれました。演武の受けを取れる若手も育ってきましたので、私の自由技演武でデモンストレーションを締めました。
大勢の前で演武をするという始めての体験をしたことで、生徒たちも稽古を続けていく上で大きな励みになったことと思います。
これを契機に更なる飛躍を目指していけると確信できたお披露目式となりました。
なお、この模様はTV局4局により明日全国放映され、皆様にも参加いただいた1月のアーク・プレック・アンチャン道場オ-プニング・セレモニーなども含めて、既に、6回ほど合気道の紹介がTVで放映されることになります。

3. 治安情報?「みちのくに一人旅」にご用心
現在、タイ・カンボジア国際国境としてオスマイ(オッド・ミアンチエイ州)、チャム・イエイ(コッ・コン州)とポイぺト(バンテイアリー・ミアンチェイ州)の3ヶ所があります。この中で、ポイぺトはカジノのある街として有名で、タイからのギャンブラーとカンボジア人の日雇い労働者、建設作業員、モーターサイクルドライバーなどが集まる歓楽街です。この為に風俗店も多く、ドラッグ、人身売買、密輸やHIV/AIDSがはこびり、カンボジアの社会が抱える病巣がすべて存在する街と言われています。
我々JICA関係者も単独行動は避けること、移動は陸路を避け空路にすることを指示されており、外務省の海外安全情報でも「渡航の是非を検討」地域に指定されております。取り締まるべき役人の給料が安い為(25~40ドル/月 !!)、麻薬のデイラーから金の提供を受けているケースも多く、警察力も不充分で治安の悪い地域です。
ところが、6月末に勇敢というよりは無謀にも一人でタイからこのポイぺト経由で陸路入国した邦人女性がいました。更に悪いことに、ポイぺトで相乗りタクシーを利用し、プノムペンへ向けて移動しました。
同じタクシーに乗り合わせたカンボジア人男性3名に、車中でパスポート、カメラを奪われたうえ、首を絞められるなどの暴行を受けたことから生命の危険を感じて、この女性はタクシーが少しスピードを落とした時にドアを開けて飛び降りたそうです。
結局、全身打撲、左眼窩骨折、頚椎脱臼などの重傷を負ってしまいました。
事件が発生した場所は通信関係のインフラも未整備な為に、日本大使館の警備班でも事件や被害者に関する情報収集に困難を極め、対応に苦労されたようです。
「みちのくに一人旅」は犯罪の標的として狙われやすく危険ですので、腕に覚えのある皆様も危険を事前に察知し、避けることも武道の極意と心得て、くれぐれもご用心ください。

第2回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2003年7月号の転載です。
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「カンボジア通信 July 1、2003」

1.日常生活?体感温度
日本は梅雨明けまえから真夏日が続いているようで、体調管理に苦労されている方も多いかと思います。本格的な夏の到来へ向けてご自愛下さい。
こちらも、朝起きて温度計をみると32度位ですが、扇風機の風でなんとか凌いでおります。日中、外の直射日光の中では35度以上はありそうで、さすがにすぐ汗が噴出しますが、家ではクーラーはなるべく使わないようにしております。我慢できない時でも室温が30度になればクーラーは切ることにしております。
一年で一番暑いといわれる4月~5月を無事乗りきり、こちらの暑さにも少しは身体が慣れてきたようです。体感温度からいうと、今の日本の方が熱く感じそうな気がします。

2.合気道-昇級試験
6月は指導している三ヶ所の道場でそれぞれ昇級試験を行いました。
受験者は5級28名、4級24名でしたが、2~3年前から稽古を始め既に4級を取得済みのフランス人、トルコ人2名の3級審査もあわせて実施しました。
特に、アーク・プレック・アンチャン道場の高校生25名が初めての5級審査に取り組んでくれました。若いこともあって覚えも早く、期待通りの動きをしてくれ、安心しました。
かえって、3級を受験した2名の外国人の方が、技はしっかりしているのですが、さばき、抑えなどに最初に教わった先生の癖が染み付いているようで、悪い癖を直すのに苦労しております。 
これで5級34名、4級24名、3級2名となり、カンボジア合気道クラブも少し形が出来て参りました。引き続き、初心者を含め全体のレベルアップを追求していきます。

7月3日に東京のJICA本部の代表がカンビジアを訪れ、アーク・プレック・アンチャン道場の視察も行うそうです。生徒たちが元気に稽古に励む姿をお見せできるものと楽しみにしております。
先日、住友商事プノムペン事務所の大塚雅康氏(大阪大学合気道部OB)が久しぶりに稽古に見えて、バクセイ・チャムクロム・クラブの生徒を鍛えてくれました。
彼の話では、今年はカンボジアがフランスから独立して50周年になると同時に日本とカンボジアの外交関係が樹立された50周年にもあたるそうです。また、アセアン・日本交流年ということもあり、この秋に向けて、日本人会も諸々の行事を準備中です。
合気道も参加しませんかとのお誘いがありましたが、まだ単独での演武会開催は現状では難しそうで、どうするか考慮中です。

3.政治情勢?総選挙の年は殺人事件が増加
6月26日より5年ごとの総選挙の選挙キャンペーンがスタートしました。
7月27日が投票日ですが、ドナー各国にとっても大きな関心事です。アジア地域フォーラムに出席したパウエル国務長官もフン・セン首相との会談では、自由かつ公正な選挙の実施と各23政党への公平なメデイアへのアクセス(国内メデイアの90%は与党CPPにより牛耳られている為)を強く要望したようです。
総選挙の実施には、1,250万ドルのお金が掛りますが、その内国家予算で計上できる金額は500万ドルに過ぎません。アメリカ、フランス、ベルギー、オーストラリア、日本などのドナー国が不足分を提供しますが、公平な選挙が実施できれば、今後の援助額を増やすとする国も少なくないようです。

1993年、1998年の総選挙の際は、各政党の候補者、活動家の暗殺事件が多発しました。今年も既にCPPで10名、野党のフンセンペックで5名、サム・レインジーで4名が暗殺された他、襲撃を受けた者も11名を数えます。
容疑者として14名が逮捕されていますが、内務省の報告ではこれらの事件は個人間の争い、家庭内暴力、強盗によるもので、政治的背景はないとしております。
しかし、暗殺された中にCPPの役員やフンセンペック総裁ラナリッド王子のシニアアドバイザーが含まれており、事実はどうなのでしょうか。
政府筋は、アメリカ国務省や各国の人権団体の非難に対して、1993年、1998年の総選挙時に比べて発生件数はかなり減少、治安は大幅に改善していると反論しております。

6月16日からアジア外相会議、アジア地域フォーラムと世界の注目を集めた会議がプノムペンで開催されたこともあり、セキュリテイーの強化が図られました。この為、コンポン・チャム州でサム・レインジー・パーテイのカンセラーがバイクで不審な交通事故死をした以外は新たな暗殺事件は報道されておりませんが、選挙キャンペーンの終わる7月25日まで目が離せません。日本の選挙では、現ナマが使われるだけでしょうが、こちらでは現金と銃のまさに実弾が飛び交うすさまじい選挙で、我々日本人の思考を超えているようです。
こちらで暮らしていると、日本人の感覚では想像もつかないようなことを見聞できますので、折にふれ紹介してまいります。

第1回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2003年6月号の転載です。
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合気道
現在三ヶ所の道場で稽古を行っておりますが、今月はこちらでも昇級試験を
実施します。
・6月4日(水):ドゥ-・バサック道場
・6月7日(土):バクセイ・チャムクロン・クラブ道場
・6月19日(木):アーク・プレック・アンチャン道場
特に、アーク・プレック・アンチャン道場の高校生が初めての昇級試験で張切っております。20名位が対象で、何度かリハ-サルもやり準備は出来ていますが、当日が楽しみです。
定着しつつあるメンバーは3道場あわせて60名くらいに落ち着いております。
サマーコースのクラスを用意し、高校生、大学生が増やせないか検討中です。

?日常生活
こちらで生活していて強く感じるのは、子供の多さと年寄の少なさです。
私の世代の日本と同じで貧乏人の子沢山とポル・ポト政権時代の大虐殺も影響しているのでしょうが、14~24歳の階層で総人口(推定1,200万人)の52%を占めるそうです。
7月27日に日本、アメリカ、フランス、ベルギーなどのドナー国が注目している5年ごとの総選挙がありますが、今年新たに18歳で選挙権を獲得した人数は50万人と報じられておりました。人口構成の面からは日本とは逆で、将来へ向けて活力と希望にあふれる国とみることも可能です。
反面、青少年育成の為のインフラの遅れが大きなネックとなっていることも事実でしょう。
アーク・プレック・アンチャン道場を建ててくれた「アーク」(北條友梨代表)や「JHP・学校をつくる会」(小山内美江子代表)など多くのボランテイア団体が学校を建設し、寄贈してきました。
それでも、二部制(今の若い人には死語かな?)が殆どの為、学習時間不足を補うべくプライベートスクールに通う子もいますが、かなり裕福な家の子供だけだと思います。
家計の足しにとプサー(市場)やレストランなどで物売りや物乞いをする子供を多く見かけます。
合気道などの武道やサッカーを通して、これらの子供たちの明るい未来が開けるように少しでもお手伝いが出来ればと願っております。
今日のところはこの程度で筆を置きますが、選挙、交通事情、王位継承や殺し屋に関する話題など、徒然なるままにお伝えして参ります。

プノムペンより  工藤  剛