第18回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、 月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。 今回は2005年2月号の転載です。
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「カンボジア通信 February 1, 2005」

1.結婚式たけなわ

乾季に入るとカンボジアでは、雨が降ることもなく比較的過ごしやすい季節となり、各地で結婚式が盛んに行われるようになります。特に、12月から1月にかけて暑さが和らぐ頃になると、街のあちらこちらで結婚式用のテントを見かけることが多くなります。

ご多分にもれず私も1月8日と16日の2回、結婚式に呼ばれました。
最初は同僚のラブート氏の次女、二ミット嬢(23歳)の結婚式で、彼女は私の稽古にも最初から参加し、ハノイでの合気道演武大会にも連れていきましたので、心より祝福しての出席でした。胃が弱くて身体も細く、病院へ見舞ったこともありましたが、熱心に稽古に励み、良い伴侶にも恵まれ晴れの日を迎えることができました。

式場は花嫁の実家を使うケースも多いようで、我々が普段稽古をしているバクセイ・チャムクロン・クラブの自宅兼道場で披露宴が行われました。
我々、日本人は夕方から始まる披露宴に出席するのですが、家族付き合いのラブ-ト家のお祝いということで、朝に行われる行事にも参加してみました。披露宴で使われる果物、野菜、食べ物などを盛った器が500m位離れた場所に用意され、多くの人がそれぞれの器を捧げ行列して式場まで行進します。果物、野菜、食べ物と器の順番が決められていて、私の器は笹餅のような食べ物でしたので、後ろの方の列に連なり行進しました。

街で同じ行列を見かけることがありますが、日本人1人が列に加わりこの国のしきたりを初めて経験することができました。夕方六時半から始まった披露宴では、十人掛けのテーブルに全員が揃い次第、料理が出始め、一通りコースが終わると最初の客は退席します。すぐに、テーブルがセットし直され、次の新しい客を迎えます。入れかわり立ちかわり招待客が来ますので、その間、花婿、花嫁とそれぞれの両親は出入り口でお客様への挨拶のため、立ち続けます。
花婿、花嫁不在の中で、歌手によるクメール・ソングや掛け合い漫才のにぎやかな声が式場内に響き渡り、招待客はひたすら飲み食いと話しに精を出すといった状況です。

9時位になって、やっと新郎、新婦によるケーキカットが行われ、全員による祝福で盛り上がります。後は、クメールダンスの輪ができ、生徒に教わった独特の手と足の動きを真似て、私も踊りに加わりました。貴方のクメールダンスは良いと誉めてくれる人もいました。かくして、披露宴はいつ終わるともなく夜が更けていきます。多くの武道関係者と共に日本人、フランス人などの合気道稽古仲間も参加し、新郎、新婦を祝福しながら、楽しい一夜を過ごすことができました。
もう一つの結婚式は衝撃の招待状から始まりました。実は、40歳代の女性コック、ピエップさんをSV仲間の林 千秋氏(空手道コーチ、飯田市出身)とシェアーしているのですが、彼女から招待状が渡されました。妹が5人いますので、妹の結婚式かと尋ねると自分の結婚式との答えでした。彼女はもう大分前に医者をしていた最初の夫を亡くし、それ以来、日本人の家でコックなどをして一人で生きてきました。

この国の男性は初婚の場合でも30歳を超えた女性に声を掛けることは殆どなく、40歳以上の女性の結婚式にでる機会はまずないと言ってよいでしょう。連れ合いの男性も我々が住んでいるバサック・ホテル内のJICA関係者の運転手を勤める方のようで、同世代ということで知り合ったようです。

林さんとの車に同乗を頼まれたメイドさん二人を同行しましたが、彼女たちも妹の結婚式と信じていたようで、式場となったタケオ州のピエップさんの実家で、花嫁席に鎮座する本人を見てたまげていました。私は思わず笑ってしまいました。というのも、メイドの一人は34歳独身で、いつ結婚するのと尋ねると、30歳を過ぎた女性は一人では夫となる男性を見つけることはできないと嘆いていたからです。彼女にとって、40歳を過ぎたピエップさんの花嫁姿はかなり刺激的だったようです。
       

合気道活動報告—うれしい悲鳴

先月号で新道場「アーク・トゥール・クラサング道場」の立ち上げと生徒の人数にこだわらず内容の充実に努めると報告したばかりですが、1月に異変が起こりました。「アーク・プレック・アンチャン道場」は昨年秋頃、生徒数が激減したため、入口に案内用の看板を掲げ募集を促したところ、35名くらいに戻り安定していました。

ところが、1月中に中学生中心に50名ほどの新たな登録がありました。理由は良く分りませんが、最初から稽古してきた生徒たちの紹介や口コミで合気道場の存在がこの地域内に広まってきたためと思われます。他の2道場と新道場のスケジュールの関係で私の指導時間を増やすわけにもいかず、最初からのメンバー4~5名が初心者クラスの指導を行うことになりました。

急に生徒数が増加し、戸惑っているところですが、落ち着くまで少し様子を見ることにします。この煽りで、新道場の立ち上げも少なからず影響を受けており、稽古開始は2月初めからとなりそうです。同僚のラブ-ト氏によれば、30~40名位の生徒が参加するようです。

2月21日(月)に本部道場から金澤師範、小谷指導員をお迎えして開催するオープニング・セレモニーでは、新しい生徒たちの元気な姿をお見せできるかと思います。 楽しみにしております。
  

カンボジア・トピックス

*交通事情

通常、私が稽古指導に出かける時はラブ-ト氏とカー・レンタル契約を結んでおり、彼の車を利用しています。それ以外の時は主にオートバイ・タクシー(通称、モトドップ)とシクロ(人力車)を利用することもあります。モトドップ、シクロは一回2,000~3,000リエル位で、日本人にはかなり格安な乗り物です。タクシーは空港やホテルで呼ぶことができますが、市内を流すタクシーは稀で、殆ど利用することはありません。

近年、急速に自動車の数が増え、朝夕の通勤時間帯にはかなり交通渋滞するようになりました。路上は、オートバイ、シクロ、自転車、自動車に行商の手押し車などが雑然と行き交い、かなりの混雑です。特に、バイクは免許制度がないため、誰でも簡単に利用しており、交通規則やマナーは無きに等しく、衝突事故を起こしたり、転倒したりは日常茶飯事です。市内では混雑の中でスピードが出せないためか死亡事故は少ないようですが、アーク・プレック・アンチャン道場に通う国道6号線では、バイクの死亡事故を一度だけですが目撃したことがあります。

このような状況もあり、JICA事務所では職員、専門家をはじめ我々ボランティアにも自分で車を運転しないよう勧めております。安全面からの理由と交通事故時に我々外国人が交渉に参加すると、こちらの車に責任が一切ない場合でも、もつれることが多いからと聞いています。

経済財務省によると8万台を超える車輌所有者の内、2004年に自動車保有税を支払った人はわずか3,000名に過ぎないそうです。自発的に税金を支払えば追徴を課すことはしないと税務当局は徴税促進に努めていますが、より効果を上げるためには反則者の取り締まりを強化せざるを得ないとしています。

ところが、政府の高官などが軍や警察が使用するプレートナンバーを悪用して税金逃れをしていると野党議員は非難しており、税務面での中立公正さがここでも強く求められております。  
    
カンボジア合気道クラブ
工 藤  剛