第11回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2004年5月号の転載です。
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「カンボジア通信 May 5, 2004」

1. 四月 - クメール正月 & 鎮魂の月

こちらは暑い盛りで、なるべくクーラーは使わないようにしていますが、室温が32度もあり寝る時はさすがに30分程度クーラーのタイマーをセットしておかないと眠りずらい夜が続いています。6月には涼しい日本へ一時帰国をする予定ですので、5月末まではやせ我慢せざるを得ません。

さて、四月のクメール正月(13日~15日)は終了しましたが、この間、今年も例年通り交通事故や火事が多発したようです。
プノムペン市内でも7名死亡、8名重傷となる8件の交通事故が発生しました。一方、地方へ帰省する旅行者で各国道もかなりの混雑で、スピードの出しすぎと飲酒運転も増えるために各地とも同様です。

ところで、この四月はカンボジアの為のボランテイア活動中に犠牲となられた2青年を鎮魂する月でもあります。1993年4月8日にコンポムトム州で活動していた国連ボランテイア(UNV)中田厚仁さんがポルポト派と思われる兵士に襲撃を受け、殺害されました。同氏はUNV選挙監視日本人ボランテイアとして活動されていましたが、まだまだ治安が悪い状況下で自分を守る術はなかったものと思います。
当時、日本人会の会長をされていた馬清氏(現在、JHP・学校をつくる会プノンペン事務所所長)は、UNTAC病院の冷蔵コンテナに安置されていた中田さんとクメール人スタッフの2遺体と対面し、「花束を添え、同行してくれた人達と共に線香を上げ、法華経を読み、題目を上げる。」(馬清著、私見~カンボジアでの十三年~)という体験をされました。

奇しくも、この4月8日にヨルダンのアンマンからバクダットへ向けて陸路移動中の日本人3名が武装グループに拘束され、大騒ぎとなりました。各方面からの働きかけと本人たちの活動ぶりが効を奏し、幸い無事解放されましたが、その後拘束され解放された2名も含め、こちらの新聞でも“jiko sekinin”の言葉と共に彼らに対する日本での様々な反応ぶりが紹介されました。
今回の事件は、外務省より避難勧告が出ている危険地域でのボランテイア活動への大きな問題提起になったようです。多くの困難に直面しているイラク人の為の支援活動という動機は尊重されるべきものです。

しかし、安全にいくら気を配ると言っても、結局は、自分の身は自分で守るしかない以上、特に紛争地域でのボランテイア活動にはそれなりの覚悟が必要であることを再認識させられた事件となりました。
1981年4月16日には、タイ国境の難民村アランヤプラートでJVC(日本国際ボランテイアセンター)の活動をされていた3名が強盗に襲われ、西崎憲司さんが亡くなりました。また、1993年5月4日には、文民警官の高田晴行氏がタイ国境近くのバンテイ・ミエンチェイで殉職され、PKOによる日本からの派遣要員の最初の犠牲者となったことを記憶されている方も多いと思います。
志半ばで亡くなられた3名の方のご冥福をあらためてお祈り申し上げます。
       

2. 合気道 - ハノイ・東南アジア地域合気道演武会&セミナーと(財)合気会からの道着提供

4月17日にベトナム日本センター(VJCC)主催による「ハノイ・東南アジア地域合気道演武会&セミナー」が開催されました。カンボジア合気道クラブからもJICAカンボジア事務所の支援を受けて、クメール人生徒2名を含む4名が参加できました。
ラオスから青木さんと生徒6名、タイから深草先生と生徒2名、シンガポールからMr.Freddy Khong と生徒3名が参加、日本からは堀添7段(法務省合気道部)、市塚6段(埼玉合気会)、鈴木甫6段にJICA合気道部のメンバーも参加されました。また、奈良県支部の窪田先生は急遽来れなくなりましたが、立川3段、田中2段の女性2名が大会に彩りを添えてくれました。

ベトナム各州から合気道クラブが勢ぞろいし、東南アジア6ヶ国によるハノイでは初めての大きなイベントとなりました。演武会はVJCC橋本所長の開会宣言と来賓の挨拶の後、VJCC合気道クラブ56名による演武で幕を開けました。
ベトナムからは、フエ、ダナン、ダラット、ホーチミンなどの州から8クラブの参加で、それぞれの歴史を表すような特色ある演武が披露されました。この国において発展してきた合気道の多様性がうかがえました。

次ぎに、カンボジア、日本、ラオス、シンガポール、タイの順で演武が行われ、我が生徒2名も普段の稽古どおり演武をこなしてくれ、安心しました。
最後は、鈴木6段、市塚6段、堀添7段の演武が続き、深草先生がトリを務められ、すべての演武を無事終了しました。
堀添初代ベトナム日本センター所長が、ベトナム合気道の統一的発展に思いを込められて閉幕の挨拶をされましたが、会場となったハノイ貿易大学体育館の観客席もほぼ満員で、記念となる良い演武会でした。

主催者側の要として奮闘された要田正治さん(VJCC合気道クラブ代表)を始め、ベトナム日本センターの関係者の皆様、本当にお疲れさまでした。
更に、16日、18日の2日間、日本からの3先生と私、青木さん、深草先生の担当で、計6回のセミナーも開催されました。
ベトナムの道友たちも、これだけ多くの先生に一度に指導を受けたのは皆初めての経験のようで、それぞれのセミナーで興味を持って稽古していたようです。私のセミナー終了後は、ベトナムの道友から記念写真を何度もせがまれ、少しは役に立てたようでほっとしました。演武会終了後にベトナム各州からの合気道クラブによる会議が開かれ、我々もオブザーバーとして同席しました。
ベトナム合気道界を代表する連盟の設立が大きな課題となりますが、各クラブの代表者が全員揃っていた訳ではないこともあり、今後、話し合いを続け検討していくことになりました。我々も、ラオス、ベトナムなどと協力関係を強めながら、アジア合気道連盟への加盟をめざして参ります。

この後に開かれたバオサンホテルでのレセプションパーテイは、大いに盛り上がりました。特に、若いメンバーは国籍、言語、性別関係なく、合気の和・輪の中で国毎の踊りを披露したり、歌い、しゃべりでまさに一体となって楽しんでいました。合気道を通した文化交流拡大の可能性をあらためて確信することが出来た良いイベントとなりました。

この程、あなたのやさしさを世界へ!「世界の笑顔のために」というJICAの資機材輸送支援プログラムを利用して、(財)合気会より道着80着がカンボジア合気道クラブへ寄贈されました。このプログラムはJICAのボランテイアを通して海外から要望のあった物品を日本国内で募集し、現地へ送るもので、JICA指定先への日本国内物品輸送料を負担いただければ、海外への輸送料は現地での通関手続きも含めJICAがすべて負担していただけるものです。

4月22日、バクセイ・チャムクロング・クラブ道場での稽古前に道着80着の贈呈式が行なわれ、JICAの大熊調整員よりカンボジア合気道クラブ代表のナング・ラブート氏へ道着が手渡されました。この模様は稽古とあわせて、CTNテレビ局のスポーツニュ-スで放映された他、Kampuchea Thmey Daily にも写真入りで紹介されました。

JICAとの窓口となり、いろいろご手配いただきました(財)合気会総務部の栗林先生をはじめ関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
なお、知り合いのJICAボランテイアへ物品を送り、支援されるような場合は、以下のホームページを参照下さい。
http://www.jica.go.jp/partner/smile/country.html
カンボジア合気道クラブ 工藤  剛