第14回カンボジア通信

このテキストは、6代工藤先輩が「カンボジア通信」として、
月1回発刊しているものをいただいて許可を得て転載しております。

今回は2004年9月号の転載です。

「カンボジア通信 September 3, 2004」

1. 残暑お見舞い & 還暦祝い

残暑お見舞い申し上げます。
記録的な猛暑からはやっと解放されたことと拝察いたしますが、いましばらくは厳しい残暑が続くことと存じます。体調など崩されませぬよう皆様お気をつけください。プノンペンは30度前後の気温で推移しており、少し暑いと感じる毎日です。10月12日~14日のクメールお盆休みが過ぎる頃から、少しずつ涼しくなっていきます。

ところで私事で恐縮ですが、8月23日に晴れて還暦を迎えました。なぜか生徒たちが私の誕生日を知っていたようで、3道場でそれぞれ思い思いのお祝いをしてくれました。60年も生きてきたという実感が全然なく、日本にいれば還暦祝いなどする気も起こらなかったと思いますが、異国の地でのお誘いということで素直に皆のお祝いを受けることにしました。

8月22日には、新道場建設中のToul Krasang にバクセイ・チャムクロング・クラブのメンバーが集まり、酒を持ち込み、料理を作って祝ってくれました。土地を安く譲ってくれた地主のYil Chanthou, Yil Sothy の親子はお祝いの花飾りを持参され、アーク・プレック・アンチャン道場の高校生12名もお祝いの品々を手に、バイクに分乗してわざわざ50分もかけて来てくれました。往復する道は舗装されていない所もあり、無事帰れるよう心配しながら見送りました。

翌23日には、フランス人生徒の一人、Mr.Michael Odent の自宅の屋上にバサック道場のメンバー16名が集まりました。フランス人、日本人、中国人、クメール人の混成メンバーによる国境、宗教を超えた和やかな合気道ワールドが展開され、夜が更けていきました。
これですべて終りのはずでしたが、26日(木)のアーク・プレック・アンチャン道場での稽古後に、女生徒の一人に自宅へ連れていかれました。そこには、ご家族と稽古を終えた生徒たちもいて、バースデーケーキが用意されており驚きました。皆でお祝いの歌を歌い、お祝いをしてくれた後、小さい子供たちと共にケーキをいただきました。思わぬ展開に恥ずかしいような嬉しいような気分を味わいました。

東北大、早稲田大合気道部OBで私と同期の道友はそれぞれどのような還暦を迎えられるのでしょうか。私は、プノンペンにいることで日本では味わえない形で無事還暦を迎えることが出来ましたが、これも合気道の縁あってのことと深く感謝しております。

  
2. 合気道?新道場建設工事報告第2報

8月はさすがに雨期の真っ只中で雨の降ることも多く、新道場の建設工事も滞ることがあります。しかし、8月末までに水源の確保、ウオータータンクの設置、地盤整備、基礎工事を完了し、外枠の支柱と外壁の工事に入りました。その後、屋根の工事へ進みますが、屋根が完成すれば内装工事は雨に邪魔されることもなく、順調に進捗するものと期待しております。

毎週日曜日の午後に現場へ行き、工事の進み具合を見ています。日本と比べて建設機械を使っての作業が少ないと感じます。高い所での作業用梯子も現場にある資材を組立てて作業台を作り、コンクリート型枠へコンクリートを流し込む作業をしていました。あまり機械に頼らない人の力を最大限に生かす作業ぶりを見ていると、映画で見たポルポト時代の欧米式の機械式工法を一切否定した灌漑工事を思い出しました。このような彼らの手作り作業がどのような合気道場をもたらしてくれるのか興味深いものがあります。

3. カンボジア・トピックス

・クメール人選手4名、アテネオリンピックに散る
日本が史上最高のメダルを獲得したアテネオリンピックも無事終了しましたが、日本人の大活躍に深夜遅くまでテレビにくぎ付けとなった方も多かったことでしょう。
カンボジアからは、陸上選手、水泳選手各2名の計4名がアテネに派遣されました。陸上男子100mでは、11秒56の記録で予選敗退、女子選手も準決勝へ進むことが出来ませんでした。50m競泳では男女共に90名中70位で、健闘むなしく敗れ去りました。同行したカンボジアオリンピック委員会の役員は、“勝つことは出来なかったが、前回より記録は向上している”と次回への期待を込めて、インタビューに答えていました。

子供の時からの労働で培った丈夫な足腰と体力を持つクメールの若者も多く、良い環境と指導者にさえ恵まれれば世界に通用する選手を育てることも夢物語ではないと思います。しかし、残念ながら貧困追放、道路、橋梁、学校、病院などのインフラ整備が優先され、そこまでの余裕がないというのが、この国の現在の姿です。

・インド人行商人の労働ビザ更新拒否相次ぐ
現在,カンボジアで仕事をする為に1,200人位のインド人が滞在中で、その多くは蚊帳、中国製時計、プラスチック製食器などを販売しているそうです。しかし、最近、この内70名がカンボジア当局より労働ビザの更新を拒否され、帰国を促されました。この7月から8月初めにかけてすでに43名が帰国せざるを得ませんでした。
滞在を認めるにふさわしい職業についていないことやテロリズムへの警戒などがその理由だと伝えられております。
カンボジア・インド協会でも、職業斡旋会社が紹介するような良い仕事は少ないので、来ないようインドの新聞でアドバイスしているそうです。カンボジア政府の対応も支援国に対するものとは異なり、仕事を求めて出稼ぎに来るだけの外国人には当然厳しくならざるを得ません。

・日本人女性観光客、ホテル内で強盗被害
 カンボジア観光のためプノンペンのホテルに宿泊した日本人女性5名が銃を持った強盗に部屋に押し入られ、縛り上げられ金品を奪われました。被害額は900ドルで、幸い身体への危害はありませんでした。
警察の調べでは、犯人は同じホテルの宿泊客だったようで、このホテルに営業停止を命じ、セキュリテーの強化改善を求めました。

プノンペン市も被害者への弁済を行ない、観光客の安全確保を市内のホテルに指示するなど、この事件がプノンペンのイメージを損なうことのないよう対応に努めているようです。更に、観光省も被害者5人にプノンペンからシェムリアップ間の航空チケットとアンコール遺跡の2日間無料見学券を贈呈した他、多くの異例なサービスを提供したようで日本大使館筋もやり過ぎではないかとややあきれ気味だったと聞いております。
     
カンボジア合気道クラブ          工 藤  剛